top of page

仮眠室へとエドワードを連れていき備え付けられているベッドへと促した。

 

「支えてくれてありがとう中尉。それと昨日からちょっと来ちゃって………。」

 

「いいのよもう少し頼ってくれたほうが嬉しいわ。エドワード君の場合生理痛酷いものね。女の子として生まれたからには仕方のないことだけど無理をしないでこの一週間くらいはイーストシティで情報集めするといいわ。初めての時は本当に大変だったからだいぶ慣れてきたんじゃない?」

 

「生理痛に慣れとかある?でも初めての時は中尉が気がついて相談に乗ってくれたから有り難かったよ。」

 

「とりあえずブランケットといつものお薬を取ってくるわね。少しの間横になって待ってて。」

 

「ありがとう中尉。それじゃ待ってるね。」

 

エドワードは錬金術師だ。しかも生体錬成を主にしている。つまりは知っていたのだ。いつか自分に生理と言うものが来るということを。

ただ錬金術の本をいくら開いてもそういう現象が起こるということだけでそれへの対応なんてどこにも載っていないのだからひたすら恐怖した。

まさか自分の股から血が出るなんてしかもそれは子供を作るのに大切な事だなんて。

 

そして初めての生理で中尉に自分が女であることを明かし相談したのだ。

 

かなりの覚悟で打ち明けたつもりだったが中尉はエドワードの告白を聞いて

 

「エドワード君じゃなくてエドワードちゃんだったのね。誰にも言わない方が良さそうね。それよりも体は大丈夫?とにかく体を冷やさないようにブランケットを持ってくるわね。」

 

とさほど気にした様子では無かったのだ

あとから聞いてみると「薄々感づいてはいただが確信は持てなかったしエドワード君も隠したがってるように思えたのよ」と言った。

 

ホークアイ中尉はとても優しい人だ。国家錬金術師を目指すにあたりやはり性別は少し壁であり母親の錬成に失敗した後大佐が家を訪ねて来た時の戸籍は男になっており都合がいいと思い何も言わなかったのだ。大総統には女だとバレていたようで国家錬金術師になる時の書類は性別の欄を大総統のご厚意で空欄にしたのだ。

 

大総統とホークアイ中尉のおかげで未だに性別がバレてないのは良い事だが正直もうそろそろ限界だ。エドワードはもう15になった。貧乳ではあるが少しばかり胸も膨らんできたサラシを巻いても服越しに触るとふっくらとした感触がある。子供から大人の女性へと変化していく自分の体が堪らなく怖いのだ。

 

生理は2日目が1番苦しい1日目より遥かに多い量の血を流す。エドワードの場合は共に腹痛も起こる。それは立っては居られないほどの激痛が定期的に訪れるのだ。そんな状態で旅が出来るかというと答えはノーだ。

なんせいつ激痛によって倒れるか分からない。そんな体で旅をしても駄目だということは分かりきっていた。

だからこうして時期が来ると東方司令部を拠点にし情報収集に専念するのだ。賢い弟はきっともう分かっているのだろう。それでも何も言わないでついてきてくれる所は本当に良い奴だと思う。

 

大佐はきっとこれまであまり寄り付かなかったのにと驚いてはいるだろうけど本当の理由は知らないだろう。大佐は完全にオレの事を男だと信じきっている。せいぜい今まであまり言う事を聞かなかった子供が定期的に報告書を持って来るようになった。少しばかりの成長だとか思ってる。

 

生理で痛むお腹を生身である左手で抑えながら大丈夫。大丈夫と唱える。中尉が用意してくれる薬は痛みはあまり収まらないが飲むだけでも気分が違う。薬を持ってきてもらうまでの少しの間だ。深く深呼吸しながらホークアイ中尉を待つ。

 

コンコンと控えめなノックがかかる

 

「エドワード君入るわね。」

 

丁度痛みの波が過ぎたタイミングでブランケットと水の入ったコップと薬を持った中尉が入ってきた。

 

「ありがとう中尉。本当に助かる。」

 

「薬を飲んだらこのまま寝てていいから。もうお昼くらいだけどご飯食べられるかしら。そのぶんだとまだまだ痛むんでしょう?大佐には単なる疲労で寝かせておいてあげて下さいと言っておくわね。」

 

「うん。ありがとうご飯は…うん、入りそうにないからやめておく。本当にありがとう。」

 

「アルフォンス君がホテル取るって言ってたから夕方くらいに起こしても大丈夫かしら。」

 

「うん。このまま執務室で夜を明かすなんて嫌だし助かる。」

 

「それじゃゆっくり体を休めてね。何かあったら扉をあけて言いにきてね。それじゃおやすみエドワード君。」

 

「ありがとう。おやすみ中尉。」

 

程なくしてホークアイ中尉は仮眠室から出ていくそれを見送って姿が見えなくなるとホッと一息。

 

この仮眠室は本来泊まり込みの仕事用に使われているもので大佐という立場では普段でも多い仕事量がロイ・マスタング大佐の場合は中央の将軍閣下から凄まじい数の恨みを買っているので普通の大佐より仕事量が割増だったりする。ホークアイ中尉が居るから捌けているもののそれでも必ず夜勤と言うものはある。東方司令部の実権は実質ロイ・マスタング大佐が握っているようなものだ。そのためロイ・マスタング大佐の執務室にはロイ専用の仮眠室が備え付けられている。

 

だがロイ自体はあまり使っておらず生理が来てやってきたエドワードの方が多く使っているというのは本人達は知らずホークアイ中尉だけが知るある種の特権だ。

 

この仮眠室は今のエドワードにとって唯一安心できる場所でもある。扉を開ければ中尉が居る。ついでに大佐と弟も居るがそれでも同じ女性がすぐそばに居るのはありがたい事だ。

それに弟が居ないという事自体が安心できるのだ。幾ら血の繋がりがある唯一残された家族であっても股から流れ出る血の事は知られたくないのだ。

マメで同じ本を読んでおり頭の良い弟の事だ、生理のことなんて知っているし自分のスケジュール帳にいつ来ただとかを書き込みそうだ。弟に月経を管理されるなんてなんと恥ずかしいことかそれだけは避けたい。

 

股の間からドロっとした感覚がした。当てものはしているが今日は2日目だ。もしかするともうそろそろ替えておかないとまずいかもしれない。朝来る前にホテルで替えたのが最後だ。当てものは錬金術を使い改良を施したものだ普通に売られているものより何倍も吸収率は高いし肌にやさしい素材で錬成した為かかぶれたりもしない。我ながら良いものを作ったと思う。

 

貧血気味で頭もクラクラし上手く働かない。トイレに行って当てものを替えようとフラフラのまま立ち上がり執務室へと繋がる扉を開けた。

bottom of page