フラフラのまま扉を開けたエドワードに大佐が声を掛ける。
「鋼の起き上がって大丈夫なのかい?フラフラじゃないか。中尉は今席を外していてね。君の弟も宿を取りに行くと言って出ていったばかりだよ。二人とも戻ってくるには少し時間がかかると思うが、それにしても君が疲労で体調を崩すなんてね大人というものは自分で体調を管理するものだよやはり君はまだまだ子供だなぁ。」
と煽るような言葉にカチンとくるエドワードだが貧血でそれどころじゃない
「あっそ。トイレ行くだけだからいい。」
とだけ言ってフラフラのまま歩き出す子供に普段は突っかかってくるのにと大人はあまり面白くないといった表情だ。
その瞬間バランスを崩してしまったのか転けそうになるエドワードに手を伸ばし支えようとした大佐の手は運が良いのか悪いのかエドワードの胸に当たったのだ。
結果としてはエドワードは転けはしなかったがマスタング大佐の右手がガッシリ自分の乳を掴んでいるという状態になってしまった。そこには控えめだが確かに女性の胸のむにっとした感覚があるのだ。
大佐はその感覚に疑問を覚えエドワードがバランスを取り戻すと胸に当たった手を退けたそしてエドワードに告げた。
「鋼の……もしかして君は女の子なのか……?」
その瞬間エドワードは大佐の手を振りほどき脱兎のごとく走り出そうとするがそれに気がついた大佐に腕を捕まれエドワードの脱走は失敗する。
「答えろ鋼の!君は女の子なのか!」
大人は怒鳴るように自分からの逃走を図った子供に問いかける。そんな大人の言葉に少し青ざめた顔をした子供は小さな声で言う。
「分かんだろ。触ったんだから…。もう離せよ。」
頭がガンガンする。きっと血が足りてないのだ。立っているのも限界だったが女ということをバレた上今生理が来ていることまでバレてしまいたくは無いのだと気力で持ちこたえている。
「そうか………君は女の子だったのか。すまない。そうとは知らずに………。」
「どうでもいいから早く手を離せ。トイレに行かせてくれよ。」
なかなかエドワードの腕を離さない大佐にしびれを切らしたようにエドワードが言う。早くこの男から離れなければこの男の前でぶっ倒れるなんてことがあれば最悪だ。
何よりもこの男に生理中ということがバレるのがなによりもエドワードのプライドが許さない。それにそんな恥ずかしい思いをしたくない。これ以上この男の前で恥をかきたくないのだ。
立っているから凄い量の血が流れているのを感じる。当てものも早く替えないとキャパオーバーしてしまう。
「待て鋼の。体調が悪いとは聞いていたが顔が真っ青だ。」
「だから早くトイレに行かせろっつってんだよ!!」
と怒鳴るとともにエドワードの体が崩れ落ちる。
(やべぇ……立ってらんねぇ………血が無さすぎる………。)
エドワードはバタリと倒れてしまう。
遠くで大佐が自分の名を呼ぶ声が聞こえるが思考は奥深く眠ってしまいたいようでそのまま気を失った。
「鋼の!?鋼の!!大丈夫か鋼の!!!」
ロイは必死に呼びかけるが金色の子供の目は深く閉じられてしまった。
「気絶しただけか……。とにかく医者に……いや、中尉と何か話していたし何かあるのか……?とりあえずソファに」
金色の子供の体を持ち上げるととても軽かった。この子供は錬金術の師匠に鍛えてもらったと聞いてはいたがそれにしては筋肉質というよりか華奢でつるりとした女性的な肌だということに気づいてしまった。
身長が低いからかこの年頃の少女にしては軽すぎやしないかと不安になった。
もしかしてこの子供は体調不良を理由にご飯を食べていないのではとも思う。
この子供は倒れてしまうほどなのにいつもの黒の上下と赤のコートを身にまとっている。上は緩めだが革のパンツは流石に窮屈すぎやしないかと思い意識を飛ばしてしまった子供の服を少しずつ脱がしていく。子供にはだいぶ大きめだが仮眠室にはロイが仮眠室を使う時用に着替えのシャツやTシャツなどがある。代わりにそれを着せれば良いだろうと思い窮屈な子供の服を脱がしていく。
先程この子供の胸を触ってしまった事によりこの子供の知らなかった性別が分かってしまったがロイにとってはそんな事はどうでも良かったロイもまた薄々気がついていたのだ。
いつまで経っても声変わりがしない子供。成長期な筈なのに一向に伸びない背(これは子供の牛乳嫌いによるカルシウム不足ではとも疑っていた)普段は賢者の石を探し求めて自分の所には数ヶ月はざらに帰ってこない。だからこそ会うたびだんだん可愛くなっているのが分かった。
「おや?これは……?」
ロイが気がついたのは子供の窮屈な革パンツを脱がせた時だ。
その足は程よく筋肉がついているがやはり女の足で下着も普段は女の下着なのか可愛らしいパンツが目に入るのだがそのパンツには何か当てものがしてあるのだ。
ロイは子供の症状と体調不良、当てものを結びつけ気がつく。
「そうか………。鋼のは…………。月経が………。月経が来ているのか。」
月経は子供を作る為になるものだ。
と言うことは鋼のは………。
「そうか………子供が産めるのか………。」
それを理解した途端ロイの中で何かどす黒いものが生まれた。
この子供が他人の種で産んだ子供を抱いているのを想像すると何故か無性に苛つくのだ。
エドワードをちゃんと着替えさせて仮眠室のベッドに寝かせ頭を撫でる。
痛みがあるのか時々うなりながら苦しむ姿をみてロイはこの痛みが自分にも分かればいいのにと思う。
この子供が可愛くて可愛くて仕方ないのだ。今まではそんな感情をこの子供に抱くことなんてなかったのにと思ったが最後、ロイは気がついてしまったのだ。
自分がこの子供を恋愛の意味で好きな事が。